教員ブログ
「幸せの一枚」
2011/06/24
昨日は沖縄「慰霊の日」。沖縄県主催の沖縄全戦没者追悼式がとり行われました。各地で祈りと誓いが捧げられた一日だったようです。その追悼式で、中学2年生の嘉味田朝香さん(13歳)が詩「幸せの一枚」を朗読しました。全文を紹介します。66年前の暑い沖縄でのできごとを想像し、戦争と平和を考える機会になればと思います。(内田)
「幸せの一枚」
私の祖母が持つ一枚の写真
何年も経つけれど
忘れられない笑顔
忘れられない言葉
小学生の頃
先生がだした宿題
家族から戦争の話を聞いてくること
急いででかけた
祖母の家
祖母は何も言わず
棚の奥から
一枚の写真を
取り出した
古びた写真に写る
子どもたち
満面の笑顔の男の子
勝気そうな女の子
おとなしそうにはにかむ笑顔
豪快に口をあけた笑顔
たくさんの笑顔
一人一人の目は
未来を見つめ
キラキラ輝いている
「この人だぁれ?」
真ん中に写る女性を指さし
祖母に尋ねる
祖母は寂しそうに笑い
「わたし」
一言だけ答えた
一人一人の顔を
愛おしそうに
懐かしそうに
指でなぞるように
眺めながら
時が止まる
「この子たちは?」
ふたたび祖母に尋ねる私
「おばあちゃんの生徒たち」
「大切な大切な生徒達」
「みんなどうなったの?」
祖母は答えなかった
ずっと黙ったままだった
幼い私にも
祖母の深い悲しみが
深い苦しみが
痛いほど伝わった
長い沈黙のあと
祖母は
「どうして戦争なんかするのかねー
戦争さえなかったら
みんな幸せだったのに…」
私はもう一度写真を見た
みんな笑っている
幸せそうに笑っている
愛する家族がいたはずだ
たくさんの夢があったはずだ
大人になるその日を夢みていたはずだ
その笑顔を 幸せを
奪った戦争を
私は許さない
絶対に許せない
祖母は多くを語らない
私はあれ以来
あの写真を見てはいない
祖母の家に眠る一枚の写真
それにこめられた祖母の思い
もう何年も経つけれど
忘れない
私はずっと忘れない
私たちが忘れない限り
平和は続くだろう
だからこそ
忘れてはいけない
この地には
たくさんの笑顔が
たくさんの夢が
眠っていることを
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